Drum Tuning #4 -Tom & Floor Tom ②-

というわけで、タムとフロアタムのチューニング、

①表裏のヘッドを同じピッチに張る

②表を高め裏を低めのピッチにする

③表を低め裏を高めのピッチ

の、②についてです。

 

ロックには②のチューニングです。

ちゃんとラグ付近の音を均等にチューニングした状態でマレットでラグ付近を叩き、Tune-Botで数値をみます。

そして裏ヘッドより表ヘッドを-3(短3度)高くします。

例えば、裏を叩いて『196Hz』と出たとします。

これは3Gで、ピアノで真ん中のドからドレミファソと行った所のソの音です。

ソの-3高い音というと、ソからラbが-2(半音または短2度)、ソからラがM2(全音または長2度)高い音と来て、シbという事になります。

ピアノの鍵盤で言うと、白鍵と黒鍵含めて、隣に3つ行った音です。

Tune-Botを買うと12音階と周波数の相関図が付いていると思うのですが(アメリカで買ったものには付いていました)、右に3つ行った周波数です。

シbはBbで、A#と同じ音なので、表ヘッドを233Hzに合わせます。

そうすると表が裏より-3高い、もしくは裏が表より-3低いチューニングが完成します。

そして表をスティックで叩いた時の音を12音階の音に合わせたいのですが、実際はそんなに簡単にいく事もありますし、いかない事もあります。

ラグ周辺の音が表も裏もドレミファソラシド、なおかつ表を叩いた音がドレミファソラシド、という具合に全てのドラムがバシッと決まることはないでしょう。

 

例えば12インチのタムを3C#(138.6Hz)の音に合わせたいとします。

とりあえず表を高めで裏を低め、という感じでアバウトにチューニングしていき、ひとまず表の真ん中を叩いて3C#の音に合わせます。

そして表と裏のラグ周辺のピッチをはかります。

音の間隔が-3よりも広ければ表を緩めて裏を張り、狭ければ逆に表を張って裏を緩めます。

表裏のピッチがドレミファソラシドになればそれでいいですし、ならないのなら間の周波数にします。

裏の音が3G#(207.7Hz)と3A(220Hz)の間になりそうで、表が3B(246.9Hz)と4C(261.6Hz)の間になりそうとします。

なるべくそれぞれ真ん中の周波数とか、1/3進んだところとか、裏が5高くて表を7高くするとか、そんな感じにはしたいもののなかなか難しいので、僕はそれなりに努力はしますが適度に妥協するスタンスでやります 笑

Tune-Botは小数点以下は出ないですしね。

手持ちの12タムでは、表255Hzと裏212Hzで139Hz に合わせました。

これをメモっといて、「次回はもうちょっと-3差に近づけるか」という感じです。

 

「GとかBbとかCとか一体何なんだ!?」というドラマーの方々、安心してください。

アルファベットは何であれ、とりあえず隣に3つ行った音です。

これで何とかなります。

あとはずっとやれば耳が慣れて、Tune-Botがなくても何となく再現できるようになります。

Tune-Bot無しでも、何となくではなく、ちゃんとやりたければイヤートレーニングをして相対音感を鍛えることです。

以下はおまけです。

 

C=ド

C#=ド#=Db=レb

D=レ

D#=レ#=Eb=ミb

E=ミ

F=ファ

F#=ファ#=Gb=ソb

G=ソ

G#=ソ#=Ab=ラb

A=ラ

A#=ラ#=Bb=シb

B=シ

 

1C=一番下のド

2C=一つ下のド

3C=真ん中のド(Middle C)

4C=一つ上のド

5C=二つ上のド

Drum Tuning #3 -Tom & Floor Tom ①-

タムとフロアタムのチューニングですが、両方とも基本同じです。
バスドラムも同じですが、別の回でいずれ説明することにします。

前回のスネアのチューニングと違って、
①表裏のヘッドを同じピッチに張る
②表を高め裏を低めのピッチにする
③表を低め裏を高めのピッチ
と、3つの選択肢があります。

最初は①が簡単なのでおすすめです。
全くの主観ですが、吹奏楽や、レパートリーの守備範囲が広いビッグバンドに適していると思います。
もちろん好みです。
ロックやジャズ、ジャンル問わず、これが自分の音だと思ったらそれが正解だと思います。

チューニング精度を、段階を追って説明します。

〜レベル1〜
Evansのトルクキーで全部のタム、フロアタムの表も裏も均等に締めます。
これだけで意外といけます。
トルクキーは一番弱いトルクが0で、9まで数字がついており、それを回転させるとトルクが強くなっていきます。
二回転半することができ、各数字の間は5段階です。
なので、ここではトルクの強さを7.1, 9.2, 11.0, 14.4などと記していきます。
例えば9.0から11.0の間で全部締めていきます。

〜レベル2〜
とはいうものの、全部同じトルクだとタム間の音程がなんだか変だったりします。
こっちは高い方が良いな、低い方が良いなというのを、トルクを変えて個別にチューニングします。
表と裏のヘッドの厚さや種類が違う時、はたまた、表が使い込まれてる場合には、表と裏のトルクも変えます。

〜レベル3〜
各タム、フロアタムごとに、トルクキーで均等に貼ったらTune-Botを使い、真ん中を叩いた時の音の高さを測定します。
トルクを変えていくつかの特定のピッチ(ドレミファソラシド)にチューニングして、好みの音はどれか探してみましょう。

〜レベル4〜
実はテンションロッドを均等のトルクで締めても、各ラグ付近のピッチは違うことが多いです。
ヘッド、テンションロッド、ラグの状態に依存します。
これをTune-Botを使い、裏表の各ラグ付近をマレットで叩いて、ピッチを全部合わせます。
真ん中を叩いた時の音をいくつかの特定のピッチ(ドレミファソラシド)にチューニングして、好みの音はどれか探してみましょう。

各ドラム間をどういった音程差でチューニングするかについては、これまた別の回でいずれ説明することにします。
個別の太鼓の、
1) 一番大きい音が出るピッチ
2) 一番好きな音が出るピッチ
3) 自分の主観で、演奏に使うことのできる一番低いピッチ
4) 自分の主観で、演奏に使うことのできる一番高いピッチ
を、表裏のヘッドの種類と合わせて記録しておくと後々役に立ちます。

Drum Tuning #2 -Snare Drum-

まずドラムセット全体の話をする前にドラムひとつひとつのお話をします。
ドラムが増えれば各ドラム間の音程差も考える必要がでてきます。
なのでひとまず、スネアとしての良い音、タムとしての良い音、フロアタムとして、バスドラムとしての良い音を探していきます。

スネアのチューニングですと、全回ふれたようにまずは表を高く、裏を低めにチューニングしてみましょう。
裏をパンパンに張る『裏パン』がお好きな方も一度試してみるとよいと思います。
表を裏より完全4度(P4)高くチューニングします。
これは厳密でなくても良いです、というか厳密にチューニングするのは難しいですし、厳密にやるのが正解かどうかは人によって変わってくるかもしれません。
ただ言えるのは「なるべく表裏でP4の差をつける」のは記録に残すにも後で再現するにも役に立ちます。
さらに、表を叩いた時の音をドレミファソラシドで表すことのできる12音階のピッチに合わせます。
これも最終的に行き着くゴールではドレミにする必要はないです、が、ひとまずドレミでチューニングをすると便利です。
(とは言うものの、このブログではドレミに合わせることの利点を何度か繰り返すことになります。)

音はもちろんスネアの寸法、材質、造りなども違えば変わってきます。
けれど、頭の中にある「これがスネアの音!」ってどんな音で鳴っていますか?
僕の好みではスネアの口径が14インチ深さが5〜5.5インチの場合はピッチを3F, 3F#もしくは3Gにするとしっくりきます。
そこを目安に、持っているスネアのキャラクターを探って、自分が一番好きな音を見つけます。

まず3F#にチューニングしてみましょう。
ということは、表と裏をP4の音程差にして、なおかつ叩いたときに3F#の音をさせるということになります。
裏表のヘッドの端のラグ付近をマレットで叩いてTune Botでピッチを計測します。
例えば裏が「247Hz」みたいな数字が出たら、表は330Hzにします。
もちろん表は表、裏は裏で各ラグのピッチは揃えます。
それを微調整しながら、スナッピーを外し、表をスティックで叩いた時に185Hzになるようにします。
この工程は次回タムのチューニングの回でもう一度、詳しく説明します。
叩いてみて、どう感じるかメモしてください。
それに加えて録音しておくと良いです。

終わったら、次は3Gにします。
表裏のテンションロッドをちょっとずつ回して音を高くするのですが、音程差をキープしたいので表の方を気持ち多めに回します。
Tune Botでラグ付近の音程差をキープしながらやるのもいいですが、なかなかしんどくなってくると思います。
なので、とりあえずTune Botを使うのは、表を叩いて3Gの196Hzに合わせるのに留めて、また試奏してメモ、録音します。
半音上がっただけで結構印象が変わるんじゃないでしょうか?
あまり印象が変わらないスネアもあります。
これを3Bbの233Hzまで続けます。
途中で「一つ前のピッチの方が良かった」と感じることがあれば、そこでやめても良いと思います。
あとスネアやヘッドの状態によっては、途中からどうしても音を高くすることができなくなることもあります。
スネアやパーツが壊れる前にやめてください、僕は責任持ちません。
そうしたら次は緩めて3Dにチューニングします。
3Eb, 3E, 3Fと続けて完了です。
「自分の好みの音はこれかな?」というのが見つかったでしょうか?
3Fが良ければ、ラグ付近の音をP4にしっかり合わせてチューニングし直します。
3D-3E, 3F#-3Bbが良ければそこまで戻って、表裏のラグ付近の音程差をしっかりP4に合わせてチューニングします。
僕は「自分は3F#の音が好みだろう」と仮定してこの作業を行なっているのでいきなり3F#に合わせてしまい、最後に3Fに合わせるのは「実は3Fが好みかもしれない、いや3F#かも?それとも3G?」というのをはっきりさせるためです。
この作業をしていると1時間ぐらいはかかると思うので、何がなんだかよくわからなくなってしまっているかもしれません。
その時はメモを見たり、録音した各ピッチを聞き比べてみましょう。

最後にしっかりとチューニングする前に、トルクキーでテンションロッドの締まりを見るのもおすすめです。
弱いトルクから段々強くしていって、表裏がどれぐらいの強さで締まっているかを、これまたメモします。
そうすると後日またチューニングし直す時に便利です。
表裏のラグ付近のピッチも記録に残しておくと良いです。
ドラムヘッドがこなれていったり、交換した時には、数字がもちろん変わりますが、経験を積めば何かしら参考になると思います。 

今回は王道的にチューニングした場合のスネアの一番良い音を探したわけですが、わざと低めにチューニングとか、高くカンカンにチューニングする場合にも応用できる事はあると思います、色々と試してみてください。 

Drum Tuning #1

よく「ドラムのチューニングはわからない」と聞きますが、なぜ良くわからないかと言うと、
具体的にどうするのかあまり話を聞く機会がないし、毎回、自分自身の経験や勘任せでドラムチューニングをするため、腕を上達させるのが難しいからだと思います。
プロのドラマーにチューニングの仕方を聞いても、大抵アバウトな答えが返ってきます。
音が良くないのを安いドラムだからということで片付けてしまうこともあるでしょう、実はチューニングを上手にすると良い音がするかもしれません。
「このスネアはお気に入りで良く鳴るんだよね」とドラムを試しに叩かせてもらう時でも、『いや、うまく鳴ってないけども…』ということもあります。

ここで、数回に渡って僕が蓄積した、誰でもすぐ真似できるノウハウを色々とご紹介しようと思います。
必要なものはマレットと、Evansから出ているトルクキーと、Tune-Botというドラム専用チューナーです。
あと、ドラム用ノートを作って、チューニングで試したことを記録しておきましょう。
自分のドラムを使うならラグやネジに油を差しておくのも重要です。

ドラムのチューニングには3種類あります。
①表裏のヘッドを同じピッチに張る、②表を高め裏を低めのピッチにする、③表を低め裏を高めのピッチにするやり方です。
ひどく大雑把に言うと、ジャズをやるなら①か③、それ以外のジャンルなら②のチューニングを行います。

ロックなら問答無用で、②の表を高め裏を低めのピッチにするやり方です。
個性を出したい場合でも、ひとまずこれを試すと良いと思います。
ドラムが「ドーン」と鳴ります。

スネアのチューニングはどのジャンルでも、②だと上手くいきます。
スネアサイド(裏ヘッド)を結構張り目な人は多いと思いますが、太鼓が良く鳴るのは実は②です。
スナッピーもテンションをきつくしがちです。
片手でスネアを叩いて音を確認しながら、ノブを別の手で緩い状態から徐々に締めていって、
スナッピーが「バラバラ」といわなくなってからもう少しだけ締めると良いです。

音程差はスネアの場合、表からみて裏をP4(Perfect 4th, 完全4度)低くします、表がドなら裏は低いソです。
タム、フロアタムの場合-3(minor 3rd, 短3度)低くします、表がドなら裏は低いラです。

で、ジャズの場合ですが、僕は「チューニングの仕方を教えてください」又は「チューニングしてください」と頼まれると、
まず①の表も裏もヘッドを同じピッチにするやり方を勧めます。
このチューニングは簡単です。
ジャズドラムなら、表裏共にRemoのコーテッド・アンバサダーを張っている、もしくは裏だけクリアー・アンバサダーを張っている時が多いです。
表も裏もヘッドの厚さは同じなので、トルクキーで全部同じテンションに締めます。
両ヘッドが新品、ドラムが新しくて、ラグとネジに油が適度に差してあるとうまくいきます。
このチューニングだと、ドラムは素直に良く鳴ります。

ある程度慣れたなら、③の表を低め裏を高めのピッチにするやり方をお勧めします。
あくまで好みですが、こちらの方がドラムのポテンシャルの全てを引き出せます。
それに音程差の可能性もありますしね、同じピッチのチューニングっていうのは同じピッチ同士にする一択しかないですから。
とは言うものの、まずは音程差はタム、フロアタム、バスドラムの場合、表からみて裏を-3高くします、表がドなら裏は高いミbです。

次回から具体的にどうチューニングするかを説明します。
参考に、これらのウェブサイトも見てみてください、英語ですけれど。
http://www.austmusic.com.au/remo/index.php/tuning-tips/
http://www.evansdrumheads.com/upload/evss_tipsheets_2006_vol1_1995.pdf

[2020/04/07 追記]

YouTubeにドラムチューニングについての動画をアップし始めたので見てみてください。

ドラム・チューニング#1〜ドラムヘッドの交換〜

[2024/04/30 追記]

以前はRemoとEvansのサイトにチューニングチップが載っていたんですが、もう見当たりません。

Elvin JonesとBass Drum ②

前回から日にちが開いてしまいました。。。

あれから自分の持っているエルヴィンの参加したレコーディングを1955年から順に聞いていました。
毎日聴いていたんですが、やっぱりバスドラムの大きさがなんだろうがどこからどこまでも完璧にジャズだし、聞き分けや判断には中々難しいものがあります。
それに実際に彼が使っていた楽器がないと感覚がわからないですし。
現代の楽器とは違う、と言うのは簡単ですが実際にビンテージ楽器は今の楽器とちょっと違います

ジャズの大学院生だったり研究者だったりすると図書館やネットで、ジャズの色々な資料、文献にあたることができます。
そうでなくてもアルバムのブックレットにちょっとでもエルヴィンがドラムと一緒に写ってたりすると一発でわかるんですけどね。
次回、日本に帰国した時には実家にあるCDを片っ端から見てみようかと思ってます。

それでも色々とわかったこともあるので、それをチラ見せしていきます。
例に挙げる録音自体は有名なものばかりですけどね。

まずは、これは20インチだろうというものです。

<1960 10/24 “26-2” John Coltrane / Coltrane’s Sound>

<1961 8/21 “Birdlike“ Freddie Hubbard / Ready for Freddie>

ベースソロの終わりが突然すぎるのがいつ聞いてもシュールです。

 

18インチが登場したのはこのレコーディングからだと思います。

<1962 1/10,1/11 “Inception“ McCoy Tyner / Inception>

 

至上の愛はブックレットの写真にWhite Satin Flameのドラム(銅鑼つき)が写ってるので18インチで間違いないと思います。

<1964 12/9 “Part III - Pursuance“ John Coltrane / Love Supreme>

 

1964年はレコーディングによって18インチだったり、20インチだったりします。

これは20インチです。

<1964 12/24 “Fee-Fi-Fo-Fum“ Wayne Shorter / Speak No Evil>

 

16インチはこれです。

<1965 8/1 John Coltrane / Live in Belgium>

ただの16インチではありません。

実はあまり知られていないかもしれませんが、深さは14インチではなく12インチ(12x16”)です。

遠近の関係かむしろ、12インチより浅く見えますけどね。

口径が20インチと18インチのバスドラムは、深さ14インチ(14x20”と14x18")です。

ちなみにコンサートの途中でフロアタムが変わります。

 

これも16インチだと思います。

<1968 5/7 “Round Trip“ Ornette Coleman / New York is Now!>

 

これがよくわからないものです。

<1965 11/10 “Monk’s Dream“ Larry Young / Unity>

今まで普通に聴いていたんですが、ふとバスドラムの音を気にすると「これなんなんだろう?」という音です。

録音は65年ですしね。

 

ということで、次回は趣向を変えてドラムのチューニングの話をしようと思います。

[2020/04/19, 2023/05/01 追記]

リンク切れ修正しました。

Elvin JonesとBass Drum ①

ブログ中では「バスドラム、バスドラム」と連呼していて、普段もバスドラと呼んでいるんですが、『〜インチ』と英語が前につくと『ベースドラム』と言いたくなります 笑。なのでせめてブログのタイトルでは”Bass Drum”と英語で表記します。

さて、Elvin Jonesがどんなバスドラムを使っていたのか調べて、分析しだしたら結構長くなり、シリーズ化しそうです 笑。今回は全体像を大まかにさらいます。

昔のビッグバンドジャズの時代は大きい24”または26”のバスドラムが主流でした。1940年代頃にDave Tough が20”を使い出してからそれが流行したようです。(http://www.maxwelldrums.com/steves-drum-facts-gretsch-c-194_134_135.html) それでも1950年代には22”を使うバップドラマーも結構いたと思うんですが、1960年代には20”が主流になります。そこからElvin Jonesらが18”を現在に至るまでジャズの主流にしたようです。ひとまずGretsch目線だと。

Elvin Jonesは1955年にニューヨークにやってきました。Gretschとエンドース契約をするのは1958年からです。今のところ僕が映像、写真で確認したのは5台のドラムセットです。

         - 20”のバスドラム、Black Pearlのカバリングのセット

         - 18”のバスドラム、何かしらのSparkleのカバリングのセット

         - 18”のバスドラム、White Satin Flameのカバリングのセット

         - 16”のバスドラム、Starlight Sparkleのカバリングのセット

         - 18”のバスドラム、黄色のセット

僕が一番興味があるのは、いつまで、どれぐらい16”のバスドラムを使っていたかです。『いつから』かはわかっています。

その後、1978年からCamco (Tama) 、1982年からTama、1996年から亡くなる2004年まではYamahaです。

根詰めてやると論文が書けるテーマだと思いますが、手持ちの書籍、音源、映像、ネットでマイペースに適度に進めていこうと思います。

[2024/04/30 追記]

以前はSteve Maxwellのサイトにバスドラムのサイズについてのブログが載っていました。リニューアルされた時に無くなったようですが、アーカイブが残っていました。

https://web.archive.org/web/20170408051647/http://www.maxwelldrums.com/steves-drum-facts-gretsch-c-194_134_135.html

18" Bass Drum

ジャズだとドラムは18インチのバスドラムが良く使われます。それが王道だし、大多数の人はジャズの演奏には18インチが良いと思っています。ビンテージのグレッチのドラムセットなんかだと18インチのバスドラムが付いたセットが誰でも喉から手が出るほど欲しいんですが、状態の良いやつだとアメリカでも$12,000ぐらい(2016年当時、120万円ぐらい)します。日本だと200万円ぐらいしますね。

さて、「ジャズには18インチのバスドラムを使う」ならいいんですが、「ジャズ18インチのバスドラムを使う」と言うと間違いになります。

ジャズの歴史が100年ぐらいあるとして、18インチのバスドラムが使われ始めたのは60年代ぐらいからです。これが間違いの理由の1つ目です。たぶん、こういったドラム談義をしていて「ジャズ」というと50年代、60年代の話をしていることが90%を占めると思いますが。ちなみにジャズが商業的に最も成功していたのは1930年代でビッグバンドに合わせてアメリカ人が踊っていた時代です。

2つ目の理由は50年代、60年代でも18インチを使ってる人が大多数、というわけではなさそうだからです。18インチのバスドラムの音のイメージがある人はその音を思い浮かべてから、Philly Joe Jonesがドラムを叩いているMiles Davisの録音を聞いてみてください。18インチの音はしていないと思います。Philly Joeが広告に使われているグレッチのチラシを見るとバスドラムは22インチや20インチです。Philly Joeが18インチをMileの50年代クインテットで使ってない時点で他の例を挙げなくてもいいんじゃないかなと思うんですが、彼の次のJimmy Cobbも20インチです。Tony Williamsは18インチですね。個人的にはTonyのバスドラの音がまさしく18インチの音だと思います。[2024/04/30 追記: 最初期の頃は20”だと思います。]

2つ目の理由を続けます。じゃあJohn Coltraneのカルテットのドラマー、Elvin Jonesはどうなんだというと、ひとまず1961年の録音である"Live at The Village Vanguard"を聞いてみてください。結構パンチの効いた音がしてるので僕は18インチではないと思います。グレッチの1963年のカタログでは20インチのバスドラム(Black Pearl)、1966年のカタログでは18インチのバスドラム(White Satin Flame)ということになっています。18インチのバスドラムを使い出したのはElvinだという説を聞いたことがあります。Tony Williams説も聞いたことがありますが、それらを検証しているわけではないのでひとまず置いておきます。持ち運びするのがでっかい太鼓より小さい方が楽じゃないか、というのが理由だそうです。それが本当だとすると音が良いからというわけじゃないですね。とは言え、僕はもちろん音も理由のうちだと思います。

で、ここで問題なのが「じゃあ65年まではElvinは20インチだったのか(66年に18インチのバスドラムのセットと広告に載るまで)」というと全くそうじゃないからです。個人的に研究中で、定かではないのですが63年はおろか62年ぐらいでも18インチを使ってる気がします。あと、さらにElvinは16インチのバスドラム(Starlight Sparkle)も使っています、しかも65年に。なのでJohn Coltraneのカルテットに参加中のElvinでもいろいろ探りながらやっていたのかな、という気がします。

60年代の他のドラマーでも結構20インチっぽいバスドラムの音はよく聞かれます。バップが終わって、ポストバップの時代になっても「18インチじゃなきゃダメ」なんて概念はまだないんじゃないかなと思います。いつ誰が決めたんでしょうね。

2つ目の理由が骨太になってしまいましたが3つ目を挙げると、現代のジャズドラマーでも18インチを使ってる人が多数とはいえ、それが唯一の答えではないからです。

次回はElvinの使用していたバスドラムのサイズについて個人的な見解の話をしようかなと思います。