スイング・ジャズからビバップ、ポスト・バップまでのドラマーは誰と何を演奏しても自分のスタイルを変えませんが、ヴィクター・ルイス、ジェフ・テイン・ワッツ、カール・アレンら以降のドラマーは共演する相手や曲によって演奏スタイルを変えます。
彼らがさらに上の世代と演奏する時は結構保守的に演奏しているように聞こえるかもしれませんが、コンテンポラリーなジャズを演奏する時にはボキャブラリーを使いわけます。
その下の世代のブライアン・ブレイド、グレッグ・ハッチンソン、エリック・ハーランド、ケンドリック・スコット、ジョナサン・ブレイク達はやる曲のスタイルによってドラムのチューニングも大きく変えます。
(ちなみにさらに下の世代はドラムのセットアップも変えます。マーカス・ギルモアなんかはバスドラムのサイズを変えたり、持って行くタムやフロアタムの数やサイズもライブによって違います。)
そういう人達が何を考えた結果でドラムをチューニングするかまではそれぞれだと思いますし、全く同じようなわけにはいきませんが、僕がいろいろ聞いて論理付けて説明できるようにしたチューニング法をこれからいくつか紹介していこうと思います。
バップ用のドラムセットでかなり何でもやれます。
僕の個人的な意見は次の通りです。
- フロアタム、バスドラムが高いとバップ感が上がる
- タムが低いとフュージョン感が上がる
- スネアが低いとロック感が上がる
まず今回はMajor 7 over 3rdのチューニングです。
Major 7っていうのは例えばド・ミ・ソ・シ(C E G B)の4つの音から成る四和音のCmaj7です。
このコードの3rdの音のミ(E)を、ルートであるド(C)よりも下で弾いてベースの音にするとCmaj7/Eになります。
これをAmaj7/C#でドラムに適用すると次のようになります。
14” x 6.5” スネア : 208Hz≒3G#
(③ Top: ?Hz / Bottom: ?Hz)
12” x 8” タム : 165Hz≒3E
(③ Top: 258Hz / Bottom: 305Hz)
14” x 14” フロアタム : 110Hz=2A
(③ Top: 181Hz / Bottom: 216Hz)
18” x 14” バスドラム : 69Hz≒2C#
(③ Batter: 116Hz / Front: 139Hz)
14” x 6.5” スネアを「表の周波数 x 3/4 = 裏の周波数」 の公式でチューニングをするには3Gが上限なので、公式を無視して裏を高くします。
前回のチューニングから表面(Top)は触らず、裏面(Bottom)だけを張っています。
Tune-Botではもう倍音を測定不能になるのですが、裏面の方が表面より高いです。
前回と比べてスネアはパリっとして、タムとフロアタムは半音下がり、バスドラムは全音下がりました。
フロアタムとバスドラムの音程差で言うと、完全5度(P5)から短6度(-6)に広がりました。
Aから上のC#までの距離は長3度(M3)なんですが、反転させてAから下のC#までの距離だと-6になります。
ドラムの演奏から「Major 7 over 3rd」が聞こえてくるかと言うと何とも言えませんが、それぞれの音の響きは新鮮です。
どバップには合わないかもしれません。
他のドラムとバランスを取るため、フロアタムは少しミュートする必要があります。
全体の音を上げ下げしたり、Minor 7, Dominant 7, Minor 7(b5)など他のタイプの7thコードで試してみても良いと思います。